待人海

セピア色に　褪せるこの遠景
青の海空さえも　なす術なく
グレー色に　染まるこの記憶
波に呑まれ　忘却の世界に沈められ消える

あれからもう　片手いっぱいの年を重ねて
口付けで終えた　二人の時間は　まだ子供のまま

「いつか帰るよ」と　胸に信じるは約束
他の全て　戯言になっても構わない
「いつまでも待つ」と　空に届けるは宣誓
ウミネコに載せて　この詩よ　届け響け

笑う声　怒る眉
憂う指　優しい目
何もかも　一つたりとも　忘れたくなんかないよ….

海風から　彼方の貴方の　声を感じて？
陸風に　祈りを捧げる　「私は此処にいるから」

舞い上がる砂を　孤独の手で払いのける
泣いて震える　心が埋もれてしまいそうで
岸壁を翔ける　風が温もりを奪い去る
「会いたい」　吐息を曇天の空に願う

突然温まる　後ろから「ただいま」の声
振り返れば　凍てついた私が溶けていく
口を温める　心から「遅い、おかえり」
再び二人の　心臓が時を刻む